データクリーンルームとは?注目の背景と活用メリット、大手企業の参入事例について解説!
世界的にユーザーのプライバシー保護を重視する動きが出てきており、今後もさらにそのような動きが強まることが予想されます。
そんな中、近年ユーザーのプライバシー保護とマーケティングを両立する手法として、「データクリーンルーム」に注目が集まっています。
本記事では、「データクリーンルーム」が注目される背景とその仕組み、参入事例についてご紹介いたします。
1. データクリーンルームとは
1-1. 概要と仕組み
データクリーンルームは、多くのユーザーデータを持つプラットフォーマーが提供するクラウド環境のことを指します。データクリーンルームでは、プライバシーが保護された安全な環境下でユーザーの同意によって取得したデータにアクセスし、企業が保有する1st Party Dataなどと統合・分析が可能です。別名データバンカーとも呼ばれます。
データクリーンルームには、広告主企業やそのパートナー、およびプラットフォーマーが保有するさまざまなデータがアップロードされます。
ここにアップロードされるデータは、個人識別情報(PII)を除去・加工し完全に匿名化しているため個人が特定されません。そのため、データクリーンルームではセキュアにデータの統合・分析ができるのです。
現在、データクリーンルームはプラットフォーマーと呼ばれる多数のユーザーを抱える企業や大手企業により続々と提供され始めています。
1-2. 注目の背景
データクリーンルームの需要が高まっている背景には、法令とベンダーによる二方向からのCookie規制があります。
まず法令による規制について、海外ではEU一般データ保護規則(以降、GDPR) やカリフォルニア州プライバシー権法(以降、CPRA)など、個人情報に関する規制が強化されています。
GDPRやCPRAでは、Cookieはそれぞれ個人データおよび個人情報とされており、利用には事前に本人からの同意が求められます。
日本でも、2022年4月より改正個人情報保護法が施行され、規制が強化されました。
改正個人情報保護法では、Cookie自体は個人情報ではありませんが、新たに創設された個人関連情報という概念に分類されます。また、その個人関連情報が個人情報と紐付けて利用される場合には事前の同意が求められるようになりました。
法による規制が厳しくなる一方で、ベンダーによる規制も強化されています。
Apple社が提供するSafariブラウザでは、2017年よりトラッキング防止機能(ITP)が搭載されました。さらに、2020年3月以降は、3rd Party Cookieが完全にブロックされる仕様になりました。
Google社も同社が提供するChromeブラウザにおいて、2024年後半より3rd Party Cookieの廃止を順次行うと発表しています。
Apple社やGoogle社の3rd Party Cookie規制について詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。
>>3rd Party Cookie規制特集・後編:Cookieに関するApple・Googleの動向
このような流れの中、データクリーンルームはCookieに依存しない分析手法として注目されているのです。
2. データクリーンルームのメリットと活用例
2-1. メリット
データクリーンルームのメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 3rd Party Cookieに依存しないこと
- 幅広い切り口で広告効果を分析できること
- 信憑性の高いデータから広告パフォーマンスを分析できる
一番のメリットは、3rd Party Cookieに依存しない手法であることです。前述の通りプライバシーに関する規制が強化される中、今後は3rd Party Cookieに依存しないマーケティング手法の確立が求められます。
データクリーンルームには、関係企業が保有する1st Party DataやSecond Party Dataがアップロードされるため、3rd Party Cookieを使いません。
よって、データクリーンルームは、3rd Party Cookieに依存しない手段の一つとしてマーケターに重宝されるのではないでしょうか。
二つ目は、各広告プラットフォーマーの標準管理画面では確認できない切り口で広告効果を分析できることです。各広告プラットフォーマーの標準管理画面では、そのプラットフォーマー上で保有している情報からしか分析ができないため、分析の切り口には限りがありました。
一方、データクリーンルームは、自社のデータやパートナー企業のデータなど様々な企業が保有するデータと統合・分析することができます。これにより、各広告プラットフォーマーの標準画面では確認できなかった切り口の分析も可能になります。
データクリーンルームをうまく活用すれば、これまでになかった気づきが得られるかもしれません。
三つ目は、信憑性の高いデータから広告効果を分析できることです。これまで効果分析に活用していた3rd Party Cookieの情報は出どころが不明であるというデメリットがありました。
それに対し、データクリーンルームは自社のデータや、媒体社およびパートナー企業の提供するSecond Party Dataを活用するため、出所がはっきりしており、より信憑性が高いデータに基づいていると言えます。
2-2. 活用例
ここからは、データクリーンルームの活用例をいくつかご紹介します。
具体的には、以下のような活用例が考えられます。
・より深い顧客分析
データクリーンルームを活用し第三者機関から情報を得て、自社が保有する顧客データと統合・分析することで、自社の顧客についてより深い洞察を得ることができ、それらをもとにマーケティングの施策に落とし込むことができます。
・オーバーラップ分析
パートナー企業と一致する顧客のリストを抽出することで、自社顧客が他のサービスとどのように併用しているのかを知ることができます。パートナー企業との共同マーケティングにも役立つでしょう。
・広告の効果測定
例えば会員制メディアなどに広告を掲載した場合、会員制メディアがデータクリーンルームに匿名化したユーザーリストをアップロードしていれば、メディアに掲載した広告経由で自社のランディングページにアクセスしたユーザーのリストをデータクリーンルームにアップロード・統合することで、広告の効果計測を行うことができます。
・ユーザースコアリング
特定の評価軸に基づいてユーザースコアリングを行うことも可能です。
例えば、パートナー企業の顧客に対して自社製品を販売する際の売上見込みを算出する場合を考えてみます。
両社がデータクリーンルームを活用し、各社のCRMデータを匿名化した状態でアップロード、データ統合をします。そうすることで、パートナー企業の顧客の内、自社製品のニーズが高そうな顧客群などを分析・スコアリングすることができるため、事前に売上見込みを算出することが可能になります。
3. 大手企業が続々参入
3-1. トレジャーデータ株式会社
2022年5月に、トレジャーデータ株式会社(以下トレジャーデータ)はLINE株式会社(以下LINE)と業務提携を行い、データクリーンルームを開発すると発表しました。これにより、LINEがユーザーの同意を得て獲得したデータとトレジャーデータのCDPに格納したデジタル広告やメール配信、アプリプッシュ通知等の顧客データをセキュアに突合・分析することが可能になります。
参考:LINE株式会社「LINE、トレジャーデータと業務提携契約を締結 データクリーンルームソリューションの共同開発ならびに 「LINE」活用促進のための連携を強化」
また、トレジャーデータは2022年7月にヤフー株式会社(以下ヤフー)とも連携し、データクリーンルーム「Yahoo! Data Xross(ヤフー・データ・クロス)」を開発すると発表しました。
提供開始は2023年春を予定しています。これにより、トレジャーデータのCDPに格納されたデジタル広告やメール配信、アプリプッシュ通知の履歴などの顧客データ顧客データを、「Yahoo! JAPAN」が保持するデータを使って分析できるようになります。
3-2. 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
2021年3月に株式会社博報堂DYメディアパートナーズ(以下博報堂DYメディア)とデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下DAC)は広告オーディエンスを深堀分析するソリューション「Audience Dive」の提供を開始すると発表しました。
「Audience Dive」は、Googleが提供しているユーザープライバシーに配慮したデータクリーンルームである「Ads Data Hub」を活用し、1st Party DataとSecond Party Dataを統合することで、性別や年齢、地域、興味関心などのセグメント毎の広告成果を深堀分析することができるようになりました。
また、「Audience Dive」に対応するメディアとして2021年8月にYahoo! JAPANとLINE、2022年1月にAmazonも追加したと発表しました。
3-3. 電通グループ
株式会社電通(以下電通)は、2021年10月にTwitterと構築したデータクリーンルーム「Twitter Data Hub Omusubi」を提供開始すると発表しました。このOmusbiは、Twitterから提供されるインプレッションやエンゲージメント等のデータと、行動履歴や購買データなどの外部データとをセキュアに連携・分析できます。
また、2022年8月に電通と株式会社電通デジタル(以下電通デジタル)は複数のデータクリーンルーム環境を一元管理するシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」を開発したと発表しました。
さらに、2022年9月には電通デジタルが評価手法「ACUAフレーム」を開発したことを発表しました。「ACUAフレーム」はデータクリーンルームを活用した見込み顧客のナーチャリングを効果的にする評価手法です。
4. まとめ
本記事では、データクリーンルームの概要や活用事例についてご紹介しました。
これからのマーケティングにおいて「ユーザーのプライバシー保護」と「より良い顧客体験の提供」の両立は欠かせません。
今後もさまざまなソリューションが出てくると予想されるため、企業のマーケティング担当者は最新の情報収集に努めましょう。
公開日:2023年3月31日
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