対談:CMPはこの先5年でデータビジネスに絶対欠かせないツールになる

CMPデータ管理・活用 2020.12.01
対談:CMPはこの先5年でデータビジネスに絶対欠かせないツールになる
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株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島 亮次氏
Priv Tech株式会社 代表取締役 中道 大輔


Priv Tech株式会社(以下 Priv Tech)は2020年3月、DMP専業最大手である株式会社インティメート・マージャー(以下 インティメート・マージャー)と総合PR会社ベクトルグループの合弁により設立されました。

インティメート・マージャーがDMPの世界で積み上げてきた技術や知見と、ベクトルグループが持つリスクマネジメント領域も含めたコミュニケーションコンサルティング力。Priv Techによる個人データ等の利用同意管理プラットフォーム「Trust360」は、その両者の力を最大限に生かし、これからの日本のプライバシーテックニーズに的確に対応するサービスとして生まれたものです。

同意管理の動きは、DMPの世界においても決して無視できない世界的な流れとなっています。業界をリードしてきた企業として、インティメート・マージャーではこの流れをどう捉え、注視しているのか。またその中でどういったサービスをPriv Techに期待するのか。インティメート・マージャーの代表取締役社長、簗島亮次氏とPriv Techの代表取締役、中道大輔が語りました。

データは「使われるもの」という認識が当たり前の時代になってきた

中道 インティメート・マージャーはDMPベンダーとして業界の黎明期から走り続けてきたイメージがありますが、創業当時のデータマーケティング市場はどんな状況でしたか?

簗島 ちょっと乱暴な言い方になるかもしれませんが、当時はどんなデータの使い方をしても誰からも気にかけられなかったというか、個人情報を脅かすようなデータの使われ方がなされても、まだほとんどの人が気づいていなかったと思います。エグいデータの使い方をしている会社の話も昔はよく聞きましたし、データの使い方における自由度が高過ぎた感じがありますね。

中道 2020年は「インティメート・マージャー」という社名の由来につながる年でもありますけど、実際に2020年を迎えて、データマーケティングが置かれている状況はどう変わりましたか?(注:「インティメート・マージャー」という社名は、Googleのレイ・カーツワイル氏による「2020年に起きるであろうあらゆるデータがひとつに統合される未来の世界像」に由来している)

簗島 扱われるデータの量が圧倒的に増えたことは間違いないですよね。その中で、データというものが単なる情報ではなく、企業にとっては「使えるもの」であり、一般の人たちにとっては「使われるもの」であるということが当たり前に認知される時代になってきたのかなと思います。

大きな事件があっても「データ収集禁止」とならない理由

中道 その認知のスピードは予想よりも速かったですか? 遅かったですか?

簗島 速かったですかね。というより、急転直下というイメージかな。海外では2018年にフェイスブックのデータを不正に取得した「ケンブリッジ・アナリティカ事件」がありましたし、国内では2019年にリクナビの内定辞退率のデータ販売が大きな問題となりましたよね。「データって、使い方をちゃんと考えなくちゃいけないものだよね」という考えが少しずつ広まっていくのかと思っていたら、そうしたセンセーショナルな出来事によって一気に認識が変わってしまったという感覚です。

冷静に考えてみれば、GDPRにしてもCCPAにしても日本の個人情報保護法の改正にしても、ベンチャーしか存在しないようなこの市場に対して法律が動くようなことなど普通は考えられないことであって、2つの事件はそれだけ重大な出来事だったんだと思います。データ活用の認知度が高まってきたことの裏返しのような事件だったのかもしれないですね。

中道 特に2018年は、GDPRの適用開始とフェイスブックの問題が重なりましたからね。

簗島 はい。ただ、あれだけの事件があっても「データを集めるのは禁止」という人はいないじゃないですか。それは、データというものの必要性をみんなが強く感じているからだと思うんです。

中道 使われ方次第なんでしょうね。例えば新型コロナウイルスの濃厚接触通知アプリで個人情報を登録する場合なら、ユーザーにとってはウイルス感染の危険性が把握できるし、感染拡大を抑えるために社会的に役立つという明確な目的もある。そこにデータが使われても炎上することはないですからね。

簗島 そうしたインセンティブが提示できる限りは、データマーケティングの市場はなくならないでしょうね。

サードパーティCookie排除でオンライン広告は時代をさかのぼる?

中道 日本のRTB市場については、今後どうなっていくと思いますか?

簗島 今後サードパーティCookieが使えなくなれば、基本的に自社IDを持っている会社だけが生き残ることになると思うので、LINEとフェイスブックとツイッター、それにAmazonとGoogle、このあたりしか生き残らないんじゃないですかね。日本の会社だとYahoo!と一部のニュースアプリ以外は生き残らないかもしれない。

中道 あとは、そのあたりのログインを使っているようなメディアですよね。

簗島 はい。そう考えると、RTBはきっとアドネットワークの時代に戻っていくんじゃないでしょうか。個人的には、許諾済みのデータを使うのであればアドネットワークよりメルマガのほうがいいんじゃないかと思いますけど。

中道 確かにメルマガの方が確実に見てくれるかもしれないですよね。効率もよさそうだし。

簗島 しかもコストは圧倒的に抑えられるじゃないですか。

中道 メールを送るなんてお金もかからないですしね。

簗島 そう。そんな感じで、少し時代が戻っていくこともあるかもしれないですよね。

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国ごとの法律に沿ったCMPでなければ意味がない

簗島 個人情報保護的な法律の歴史ってめちゃめちゃおもしろいですよね。もともとはヨーロッパにアメリカ系の銀行が参入する時にさかのぼるっていう。

中道 もともと自国の利益を守るために作られたという話ですよね。

簗島 そうです。アメリカの銀行って、証券会社の機能と保険会社の機能と銀行の機能の3つを持っていて、その間で名簿をガンガンに使いまわすから営業効率がものすごく高い。ところがヨーロッパの銀行はそういうことをしていなくて、営業効率では絶対に勝てないと。ならばアメリカの銀行や金融機関が参入できないようにするために個人情報保護法を作ろう、という流れがあった。

中道 個人情報保護法相当の法律って国ごとにたくさんありますけど、成立の背景や事情って、実はそれぞれの国で全然違いますからね。

簗島 はい。それで思ったんです。GDPRが作られた理由って当時とまったく変わってないんだなって。GDPRっていわば「Googleがデータを持っていくなら金を払えよ」っていう仕組みじゃないですか。銀行の時と構図が変わっていないんです。 一方、日本の個人情報保護法は、誰が何を使おうとかまわないけれど個人の権利は侵害してはならない、という大きな正義感の下で作られている。そもそもの成り立ちの理由から違うんですよね。だから、法律のバックグラウンドみたいなことまで知っていないと、本当に最適なCMPツールを選ぶことはできないと思うんです。

中道 まさしくです。海外のCMPを導入しようと考えている企業の声もよく聞くんですけど、コンセプトがまったく違う法律に対応したツールを日本で運用しても、そのツールの価値は活かされませんからね。

簗島 かといって、海外のツールが世界の人口のわずか60分の1である日本の市場に対してローカライズすることも考えにくい。ヨーロッパやアメリカで対応できる商品に特化した方が、多くのベンダーにとっては絶対に得ですからね。 言語と法律は、ローカライズとカルチャライズがめちゃめちゃ重要なところです。Priv Techがそういう価値を理解し、一定の正義感を持ってツールを提供していることは、存在として大きいと思います。

日本にCMPが根付くためには、いつまでもブルーオーシャンではいけない

中道 Priv Techがまず目指すべきは、日本語がネイティブであるというメリットを踏まえた日本ならではのCMPを提供することだと思っています。もちろんその先にはアジア圏、そして世界への拡大も考えていますが、まずは国内ですね。

簗島 「CMPってすでに海外にいっぱいあるじゃん」と思っている会社やその担当者さんもいらっしゃると思いますけど、海外のツールにはできないことに対応できるツールが日本にあることを知らない人が意外と多そうな気がしますね。ここはもっとアピールすべきところでしょうし、Priv Techに限らず、日本の法律にマッチしたサービスがもっともっと出なきゃいけない領域だと思います。

中道 そうですね。それによって、データが不用意にGAFAに渡る世界観を日本発で抑制できるようになるかもしれないですし。

簗島 まさに。日本の法律を守るためにとか、日本で受け入れられるためにという軸は、今の日本のプライバシーテックにとってすごく重要な気がします。だからこそ、本当はもっといろんな会社が参入するべきなんですよ。 これはうちでもよくあることですけど、DMPの導入検討対象がうち1社だけだと検討にすごく時間がかかるのに、コンペだとすごく速く結果が出る。コンペティターがいないと導入の検討が進まないんですね。

つまり、日本におけるCMP市場はまだまだブルーオーシャンの時代が続くと思いますけど、日本に早くCMPが根付くためにも、競合はむしろ出なければいけないということです。その上で、Priv Techには最も一般ユーザーに寄り添った形を目指してほしいですね。まだまだ「掘れる場所」がいっぱいあるはずですから。

中道 まだ世界基準でみても正解はない領域ですしね。

簗島 新興産業が既存産業を追い抜く流れって、変化の大きい時期にこそ起こるものです。その意味で、法律の整備や改正が進む今からのCMP市場は、2020年から2025年ぐらいのデータビジネスにおいて間違いなく欠かせない領域になると思います。データを活用する流れはこれからも絶対に止まらないし、一方でデータを守る必要性は高まり続ける。その中でPriv Techがどのようなサービスを生み出していくのか。「これは楽しくなるぞ」という感覚を強く持っています。

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