ビッグデータとは?5つの活用事例と知っておきたいメリット・注意点

データ保護データ管理・活用 2022.06.30
ビッグデータとは?5つの活用事例と知っておきたいメリット・注意点

近年ビッグデータの重要性が様々なシーンで語られるようになりましたが、その定義は曖昧で、既存のデータ活用とどう違うのかわからない方もいるでしょう。ビッグデータとは具体的にどのようなデータを指しており、ビジネスにどのような好影響をもたらすのでしょうか。

ここでは、ビッグデータの概要と重要性、活用するメリットについて説明します。また、合わせてビッグデータを扱う際の危険性や活用事例についても解説しますので、すでにビッグデータの活用を検討している場合にもぜひ参考にしてください。

1. ビッグデータとは?

総務省が公表する情報通信白書では、ビッグデータは以下のように定義されています。

デジタル化の更なる進展やネットワークの高度化、またスマートフォンやセンサー等IoT関連機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、スマートフォン等を通じた位置情報や行動履歴、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報、また小型化したセンサー等から得られる膨大なデータ

引用:総務省「平成29年版 情報通信白書」

一般的に使用されるビッグデータの定義も、おおむね「デジタル技術の普及により扱えるようになったデータ群」とされるため、本記事ではビッグデータを巨大なデータ群と定義して説明を進めていきます。

なお、巨大なデータ群としてのビッグデータがどのような情報の集合体なのか、より具体的な理解を深めるにあたっては以下の表をご参照ください。

データの種別

(データ生成の主体)

データの概要

オープンデータ

(政府)

政府や地方公共団体が保有する、オープン化が推進されている公共情報

ノウハウを構造化したデータ

(企業)

農業やインフラ管理からビジネス等にまつわる事業者が保有する産業データ

M2Mデータ

(企業)

機器間の通信(M2M)により出力された産業データ

パーソナルデータ

(個人)

個人の属性・行動・購買にまつわる情報、および特定の個人を識別できないよう加工された人流・商品情報などのデータ

参考:総務省「平成29年版 情報通信白書」

2. ビッグデータが注目される背景

ビッグデータが注目される背景には、IT技術の急速な発展による大規模データの取り扱いの容易化が挙げられます。

かつては、膨大な情報量を持ったデータ群であるビッグデータを低コストかつスピーディーに処理しビジネスに活用する術がほとんどありませんでした。

顧客・業務にまつわる情報など、企業が管理している構造化されたデータとは違い、ビッグデータはソーシャルネットワークやWebアプリケーションから収集した「多種多様な構造化されていないデータ」が大部分を占めるからです。

それが一転し、技術の発展によってサイズの大きいデータの処理が可能となり、構造化されていない膨大なデータからも新たな傾向・規則性を発見できるようになりました。データ活用を支える情報技術の高度化、低コスト化が契機になったのです。

このほか、SNSの普及により流通データ量が増加したこと、国・自治体が誰でも利用可能な官民データである「オープンデータ」の公開を始めたことも、ビッグデータ活用を後押ししています。

3.ビッグデータで解決できる課題

それでは具体的に、ビッグデータの活用によってどのような課題が解決できるのか見ていきましょう。
代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

  • シーンごとに必要な情報の抽出・確認による、過去の事例からのビジネス改善
  • 担当者の勘ではなく、データを根拠に将来を高精度に予測
  • 在庫の不足や過剰を減らす、今あるビジネスを最適化して無駄を削減

必要な情報を利用しやすい形で抽出

もっとも身近で恩恵を感じやすいのが「過去のデータの適切な活用」です。 ビッグデータは、大量の情報が蓄積された集合体です。さまざまな情報が蓄積されている中から、その時々で必要なデータを容易に抽出できる仕組みを作ることで、過去の事例を活用したビジネス改善が実現します。

例えば身近なところだと、あらゆる企業に欠かせない「新人教育」。新人が躓きがちなポイント、アドバイスやよくある質問などを毎年保管しておくことで、年々洗練された教育体制が築けるようになるでしょう。また、このデータを新人が直接参照できるようにすれば、新人と教育係どちらにも負担のかかる事態も避けられます。
同じことが、企業と消費者の関係に対してもいえます。過去の購買データや購入につながるまでのユーザーの行動、お問い合わせなどを活用することで、よりよいマーケティング戦略を練ることが可能になります。

高精度な予測

ビッグデータの解析は、将来に対する高精度な予測を立てる際にも役立ちます。
高精度な将来予測は、流行を先取りしたビジネスモデルを構築したり、自社に起こりうるトラブルを未然に防いだりなど、利益の最大化と損失の最小化を目指せるでしょう。加えて、データという明確な根拠を活用すれば勘に頼った施策や根拠がない方針決定の解決に寄与し、従来よりもスピーディーな意思決定が可能です。

不足や余剰の解消

ビッグデータは、新規ビジネスモデルの創出のみならず、現在の自社ビジネスをより洗練して不足や余剰を解消することにも役立ちます。
例えば、自社商品の時期ごとの売れ行きが予測できれば商品在庫の不足や余剰を最小限に抑えられるようになります。

3. ビッグデータの活用によるメリット

ビッグデータを活用するメリットとして特に大きいのが、「より顧客へマッチする商品・サービス」の開発や提供が可能になることです。
技術発展により広範囲かつ多量のデータを扱えるようになり、未活用だったデータ同士から新たな規則性や相関関係を見出すことが可能となりました。

ビッグデータの活用によって高度な分析が可能となる理由は、ビッグデータが持つ「3V」と呼ばれる特性が関係しています。
※場面によってビッグデータの特性は、Value(価値)を加えて4V、さらにVeracity(情報の正確性)を加えて5Vと呼ばれることもあります。

ビッグデータの3V

概要

Volume(量)

多量のデータを持っている

Variety(多様性)

さまざまな種類のデータを持っている

Velocity(速度)

データの生成・更新頻度が高く、凄まじい速度で情報を生み出している

ビッグデータはただ数量が多いだけのデータ群ではありません。あらゆる場所やデバイスから生成される多様性を持った情報の集合であり、毎秒凄まじいスピードで新たな情報を生み出しています。これらの点が、従来活用していたデータでは見つけられなかった「新たな規則性」の発見を可能としているのです。

ビッグデータの活用により、従来の小規模なデータでは捉えられなかったファクトをビジネスの意思決定の材料として獲得できるようになります。こうしたファクトは深い顧客理解や新たな潜在ニーズの発掘など、自社の事業を強化するうえで良い影響をもたらします。その結果、「顧客はおそらくこれを望んでいるだろう」という漠然としたイメージではなく、顧客が本当に求めているものを提供できるようになるのです。

5. ビッグデータ活用に潜む危険性

ここまで、ビッグデータ活用の有用性を解説してきました。
ビッグデータの活用は今後その発展が大いに期待される取り組みの一つですが、その一方で以下のような危険性が潜んでいることも念頭に置いておく必要があります。

  • 個人データの取り扱いによるプライバシー問題への発展
  • ビッグデータの過信による視野の狭小化
  • ビッグデータ活用における未知の脅威

ビッグデータは様々なデータの集まりであるため、個人にまつわるデータも多く含まれます。その中には、単体では個人の詳細まで識別できなかったとしても他の情報と照合することで個人の識別が可能となるかもしれないデータが存在します。これらは個人の許可なく第三者に譲渡したり、公開したりするとプライバシー侵害につながる危険性があります。

またビッグデータは「過去、自社で蓄積できたデータ」の集合体です。自社で蓄積してきた顧客データはあくまで自社の顧客のデータであり、他社の顧客まで含有するものではありません。また、データを蓄積してきた期間と今現在の状況が変わっていれば、過去のデータのみで判断を下すのは適切でない可能性があります。「ビッグデータを活用すれば常に正しい結果が得られる」というわけではないことに注意が必要です。

長期的に正しい広報戦略を実施しているにも関わらずデータに表れていないために施策を中断した結果、同様の施策を続けたライバル企業の事業が大きくなっていった、というケースも起こり得ます。データのみを過信して意思決定をした結果、経験や勘から生まれる閃きが失われる懸念もあるのです。

そして、本格的なビッグデータの活用はまだ始まったばかりであり、運用に伴ってどのようなリスクが生じるのか分からない側面もあります。知らない間にプライバシーを侵害したり、新たなセキュリティリスクが顕在化したり、予期しない問題に遭遇する可能性も意識すべきでしょう。

6.ビッグデータの活用事例

最後に、積極的にビッグデータを活用して成果を上げている国内企業の事例をご紹介します。

株式会社あきんどスシロー

全国に約640店舗以上(2022年5月時点)を展開する人気回転寿司チェーン店「株式会社あきんどスシロー」は、ビッグデータの活用により在庫の不足や余剰の解決を実現しています。
スシローのすべての寿司皿にはICタグが埋め込まれています。このICタグで寿司の鮮度や売り上げの情報をまとめて収集・管理しており、そのデータ総数は年間で10億件以上に上ります。
これらのデータから「どの寿司ネタが、着席からどれくらいのタイミングで食べられやすいのか」といった情報を分析し、廃棄や在庫不足を最小限に抑えています。

株式会社ローソン

大手コンビニ「株式会社ローソン」も早い時期からビッグデータの活用を試みてきた企業です。
ローソンは2010年3月に「Pontaポイント」を導入し、販売データの収集を強化しました。その結果、商品に対する購入ユーザーの割合など、売り上げだけでは得られない有益な情報を知ることに成功しています。

例えばローソンの菓子パン「ほろにがショコラブラン」の売り上げは菓子パン全体の中で31位と、本来であれば販売を終了してもおかしくないものでした。しかしビッグデータから、リピート率が著しく高いことがわかりました。
Pontaの導入により「1割のヘビーユーザーが6割の売り上げを占めている」という結果も出ており、ローソンではFC店舗の発注の目安として「商品力指数」を示すなど、顧客のリピート率を重視しています。これもビッグデータが有効に活用されている例といえるでしょう。

株式会社メルカリ

大手フリマアプリとして業界屈指の知名度を誇る「株式会社メルカリ」は、2020年2月の戦略説明会で、二次流通(中古)データの大規模活用策を公開しています。

丸井に代表される一時流通(新品)を取り扱う企業とのデータ連携により、出品作業の簡易化(商品情報の自動入力)や顧客行動の可視化を目指す施策です。一時流通側としては自社製品の中古での取引金額を把握できる一方、メルカリでは顧客のさらなる理解や出品数の上昇を目指せる戦略として、今後の動向が注目されています。

株式会社ビビッドガーデン

株式会社ビビッドガーデンは、月間ユニークアクセス数約680万件を達成した産地直送が魅力の食材通販サイト「食べチョク」で知られる企業です。
ビビッドガーデンは、食べチョク内で収集した口コミ(生産者・食材別の評価)と農業向けIoTキット「Agri Palette」を用いて生産者の収入の予測を追求しています。

Agri Paletteで取得できる栽培状況のデータ(畑の土壌状態・気候・日照量など)と食べチョク内の膨大な口コミデータを掛け合わせ、購入者からの評価を収穫前に予測する試みです。
農作物の栽培は熟練者の直感や経験に頼るシチュエーションが多く、実際に収穫時期が近づくまで品質や評価が予測しにくいものです。そのようななか、ビッグデータやIT技術を活用したビビッドガーデンの「データドリブン農業」は、業界の新たなスタンダードモデルに成長する可能性を秘めています。

株式会社ベネッセホールディングス

子どもチャレンジや進研ゼミを取り扱う教育分野最大手「株式会社ベネッセホールディングス」もビッグデータを自社ビジネスに活用し続けている企業です。

教材のデジタル化により子どもの学習記録をデータとして大量に収集できる時代へと変化するなか、ビッグデータの活用を目指す専門の分析センターを設立。小学1年生から高校3年生までの子どもについて、効果的な学習方法の分析を進めています。

分析で明らかになった知見は、自社教材の設計に利用されるだけでなく、現在の状況から見る「子どもたちの将来の到達点」を予測し、一人ひとりに対して適切な目標を立てることにも活用できます。加えて、研究成果をWebサイト等で公開するなど、教育研究全般の発展にも貢献しています。

7. まとめ

ビッグデータは量・多様性・速度の面で、これまで発見できなかった規則性や傾向を見出すためのカギになり得る存在です。ただし、ビッグデータはあらゆる問題をすぐに解決する「魔法」ではないことも知っておかなければなりません。従来のデータ活用と同じく、そこには地道な仮説検証や試行錯誤が求められます。

記事で解説した「プライバシー問題・ビッグデータの過信・未知の脅威」にも十分に注意しつつ、ビッグデータの活用法を検討してみましょう。

公開日:2020年12月28日

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