3rd Party Cookie規制特集【後編】:Cookieに関するApple・Googleの動向

Cookie 2021.07.09
3rd Party Cookie規制特集【後編】:Cookieに関するApple・Googleの動向

Priv Techが運営するPriv Labでは、プライバシーに関する出来事や社会情勢の移り変わりを絶えずキャッチアップしてお伝えしております。 今回は、現在もっとも注目を集めているテーマ「3rd Party Cookie規制」を巡る動向について

  • 前編「Cookie基礎知識とテックジャイアントの反応」
  • 後編「Cookieに関するApple・Googleの動向」

3rd Party Cookie規制特集【前編】:Cookie基礎知識+テックジャイアントの反応

ITPでCookie廃止を進めてきたApple

前編はOracleや主要ブラウザベンダーなどの反応をお伝えしました。後編ではGoogleとAppleがどのようにこの問題に取り組もうとしているのか、その歴史やスタンスを見ていきましょう。

【概要】

  • ITPはCookieからプライバシーを守るためAppleが開発した
  • 2017年にITP1.0が誕生
  • 現在は3rd Party Cookieを完全にブロック

【補足】

Appleの歴史やスタンスを知るうえで重要となるのが、Safariに搭載されているITP(Intelligent Tracking Preventionです。ITPはAppleが開発したトラッキング制御技術で、Cookieからプライバシーを守るために誕生しました。

2017年9月にITP1.0が誕生したあと、たびたびCookie規制を強める形でのバージョンアップが重ねられた3rd Party Cookieを完全にブロックする仕組みです。

ITPについては、以下の記事で詳しく解説しております。本記事とあわせてご参照ください。
【ITPのアップデート内容一覧】企業が行うべき対策とは?

理解しておくべきは、Google による2020年1月のCookie廃止宣言よりも早くAppleがCookie廃止に向けて動いていた点です。Googleばかりが注目されがちですが、実際にはAppleもCookie廃止に強く取り組んでいます。

自社OSを通じてプライバシー保護を推進するApple

現在のAppleは、自社OSであるiOS 14を通じてユーザーのプライバシー保護を進めています。

iOS 14でプライバシー規約を変更 パブリッシャーに多大な影響

【概要】

  • AppleはIDFAなどプライバシー規約を大幅に変更した
  • Facebookは「自社のパブリッシャーにとって多大な影響を及ぼす」と主張
  • アプリのインストールでテストした結果、パブリッシャーの収益は50%減少することが判明

【補足】

AppleはiOS 14のプライバシー規約を大幅に更新しました。特に話題を呼んだのがIDFA(広告識別子)に関する変更です。 IDFAは3rd Party Cookieのように広告配信に活用できる識別子で、これまではユーザーに尋ねることなく収集可能でしたが、今後はユーザーからの明示の同意がある場合にのみ収集できるように変更されました。Facebookは自社のパブリッシャーの収益に劇的な影響があるとして懸念を表明しています。

「iOS 14上のすべての広告ネットワークと同じく、Audience Networkにおいても広告主の正確なターゲティングと広告キャンペーンの効果測定の能力に影響がおよび、その煽りを受けたパブリッシャーは自身の能力を効果的に収益化する力を低下させます」
引用元:アップルがiOS 14に導入予定の広告トラッキング規制にFacebookは不満を表明

実際、モバイルアプリのインストールに関する広告キャンペーンにおいて今回の変更の影響を受けるであろうターゲティング・パーソナライズを禁止したテストでは、パブリッシャーの収益が50%減少することが明らかとなっています。

AppleのCEOがプライバシーをめぐってFacebookを非難

【概要】

  • プライバシー保護の強化など国際的なデータプライバシー改革を求めた。
  • Appleのポリシー「App Tracking Transparency」(ATT)など新しい取り組みを自賛した。
  • Appleは収集データを減らす方向へシフトしている。

【補足】

上記の件以外にもFacebookはたびたびAppleを批判してきました。それに対してAppleはFacebookを逆に非難し、対立姿勢を明確にしています。

AppleのCEOであるTim Cook氏は、2021年1月28日開催のオンラインイベント「International Data Privacy Day」でFacebookを批判しました。

「誤った方向へのユーザーの誘導やデータの搾取、実際には選択とは言えない選択を基盤としている企業は称賛に値しない。そのような企業にふさわしいのは改革だ」
引用元:アップルのCEO、Facebookをあからさまに批判--プライバシーめぐり

また、AppleのプライバシーポリシーであるATT(App Tracking Transparency)を自賛しつつ、Facebookを含むすべてのアプリはこのポリシーを順守すべきだと主張しています。

「(前略)「手始めは、単純だが画期的なアイデアである『プライバシーの成分表示ラベル』だ。Apple製のものも含め、すべてのアプリがデータ収集やプライバシー慣行を開示しなければならない。App Storeではこれらの情報を、すべてのユーザーが理解して対処できる形で表示する」と語った。」
引用元:アップルのCEO、Facebookをあからさまに批判--プライバシーめぐり

Appleは年々ユーザーからの収集データを減らす方向にシフトしており、今後もこの動きは強まると予想されます。

Googleはプライバシーサンドボックスの開発を継続

一方Googleは、Cookieの代替案として期待されているプライバシーサンドボックスの開発を継続しています。プライバシーサンドボックスの詳細は以下の記事で詳しく解説しております。

「Googleの秘策」Cookieに代わるプライバシーサンドボックスとは?

GoogleがiOS用アプリの更新を再開

【概要】

  • Googleが提供するiOS用アプリの更新が久しぶりに再開された
  • Appleが新たに義務付けたプライバシーに関する詳細情報の表示をGoogleが適用していなかった
  • 適用に時間がかかった理由は述べていない

【補足】

プライバシーサンドボックスの前にGoogleの動向として押さえておきたいのが、iOS用アプリのアップデートの再開についてです。

Googleの提供する多数のiOS用アプリにて、前述のAppleが制定したプライバシーの成分表示ラベルへの対応を数ヵ月に渡っておこなわなかったことから、さまざまな憶測を呼んでいました。/

「特にバグ修正やパフォーマンスの改善を含むマイナーアップデートを定期的に配信しているGoogleのような規模の企業であれば、通常はそのようなことはない。」
引用元:グーグルがアップルのプライバシーラベル表示義務に従いiOS用アプリの更新を再開

なお、最終的にアップデートは無事に再開されましたが、なぜ時間がかかったのかについては明らかにされていません。

4月から広告主と代替技術の試験的な運用を開始

【概要】

  • Cookie規制を加速させ、FLoCなどの代替技術を促進させる方針
  • 代替技術でも3rd Party Cookie利用時の95%以上の広告効果がある
  • 3rd Party Cookie利用制限により、Googleの支配力が高まるのではと懸念の声もある

【補足】

Googleは2021年4月、広告主の協力を得てプライバシーサンドボックスの一部であるFLoCの試験運用を開始しました。

「米グーグルがインターネットの閲覧履歴などを保存する「クッキー」の利用制限に向けた取り組みを加速する。広告主と協力し、代替技術の試験的な運用を4月に始める方針だ。消費者のプライバシーに対する意識が高まるなか、ネット広告の効率維持との両立を目指す。」
引用元:Google、脱「クッキー」加速 4月から広告主と試験運用

Googleのプライバシー関連グループのプロダクトマネージャーChetna Bindra氏は、代替技術でも3rd Party Cookie使用時の95%以上の広告効果を得られると自信を見せており注目が集まっています。

一方、一部のテックジャイアントや各国規制当局からは、Googleの支配力がより強まるのではないかという懸念も出ています。こちらは前編の以下の項目で解説しています。

3rd Party Cookie規制特集【前編】:Cookie基礎知識+テックジャイアントの反応

  • テックジャイアントは意見・立場の違いが表面化
  • 各国規制当局はGAFAへの規制を強化

Googleが目指すプライバシーを優先したオンライン広告

【概要】

  • インタレストベース広告向けのプライバシーサンドボックス技術(FLoC)やFLEDGEの提案
  • プライバシーを保護しながら関連性の高いオーディエンスにリーチする代替技術を開発中
  • 3rd Party Cookieを使わずキャンペーンのパフォーマンスを測定可能にする手法を提案
  • Gnatcatcherの公開により、フィンガープリントを防止する

【補足】

2021年2月には、Googleの目指すプライバシーを優先したオンライン広告とはどのようなものか、公式ブログ上で公表されました。プライバシーサンドボックスの各要素の解説やフィンガープリントを防止する意向を示したほか、以下のように議論を歓迎する姿勢を見せています。

「利用者によりよい体験の提供を可能にし、持続性のあるソリューションを広告業界に導入するこの新しいアプローチを今後どう定義していくのか、その議論にぜひ多くの方に参加していただきたいと考えています。」
引用元:プライバシーを優先したオンライン広告の未来にむけて

実際にFLEDGEは、もともとGoogleが開発中だったTURTLEDOVEに寄せられた外部からの批判を受け止め、新たに改善策として提案されたものです。

Googleの最新広告発表では、ほとんど変化なし

【概要】

  • プライバシーサンドボックスの取り組みを通して、自社のプラットフォームで電子メールアドレスの識別子を使用する予定がないことを発表したに過ぎない
  • パブリッシャーがユーザーに自発的にサインアップしてもらい、コンテンツやサービスを受け取ろうとする戦略を意識している
  • 必要としているのはオープンソースのIDであり、特定の企業の手に渡らないコミュニティへのアプローチが必要

【補足】

Google製品管理ディレクターDavid Temkin氏が2021年3月3日公式ブログに投稿した内容は、世間に大げさに受け取られていると指摘する声もあります。

「A blog post from Google's director of product management, ads privacy and trust David Temkin was interpreted as saying that e-mail-based people identifiers would not be used, going forward.」
(試訳:Googleの製品管理ディレクターDavid Temkin氏による広告のプライバシーと信頼に関するブログ投稿は、電子メールベースの人の識別子は今後使用されないと言っているように解釈されました。」
引用元:Google's Latest Ad Announcement Changes Little: Magnite's Kershaw

マグナイト社のCTOであるTom Kershaw氏は、

  • プライバシーサンドボックスを推進すること
  • Googleは電子メールアドレスを利用したユーザー識別子(ザ・トレードデスク社の"Unified ID 2.0"に代表される、共通IDを念頭に置いたものと考えられる)を使用しないこと

を強調したに過ぎないと主張しています。

またKershaw氏は、特定企業の影響力が強くなり過ぎないオープンな共通IDや、ユーザーの自発的なログインを介したパブリッシャーとの結びつきの重要性にも言及しています。

パブリッシャーとユーザーの結びつきについてはTemkin氏もブログで指摘しており、今後のトレンドとなる可能性もありそうです。

Google による「個人追跡」の排除の意味

【概要】

  • Googleはプライバシーサンドボックスで開発してきたターゲティングと測定の能力を広告主に証明したい
  • 2021年にFLoCベースのコホートターゲティングテストを開始予定だが精度が劣るとの見方も

【補足】

Kershaw氏は、2021年4月に試験運用を開始したFLoCについて利用を支持しつつも、精度については従来のCookieによるターゲティングよりも劣るだろうとの見解を示しています。Googleはこのような疑念を払拭したいと考えており、テスト結果に大きな注目が集まっている状況です。

Googleによる今回の個人追跡排除の意味は複雑で、いまだ一言で表せる状況ではありません。

「今後Googleは自社が販売するインベントリーにおいて「代替識別子」に基づく広告ターゲティングを容認しないものの、Chromeブラウザ環境では引き続きこうした識別子が有効である」
引用元:[ 1分まとめ ] Google による「個人追跡」の排除は、何を意味するのか?

現時点で明らかなのは、Googleが代替識別子を作り上げるつもりはないとたびたび明言されている点です。代替識別子がプライバシーサンドボックスを超える存在となるのか、今後も動向を注視する必要があります。

引き続きGoogleとAppleの動向を注視

本記事では、提供側であるAppleとGoogleの3rd Party Cookie規制を巡る動向についてご紹介しました。Cookie規制後の未来についてはまだまだ先行きが見えず、情報も錯綜しています。

またGoogleとAppleのスタンスには以下のような違いが見られます。

  • Apple:極力ユーザーのデータ自体を取得しない/させない方向。
  • Google:プライバシーを意識しつつも、Appleほど厳格にデータ取得を止めようとはしない方向。

AppleはiPhoneやiPadなど強力なハードを持ち、Googleは主にデータの活用によるソフト面での発展を遂げてきた企業です。データに対する根本的な思想自体に違いがあるのだと推測されます。情勢の理解には、このような企業ごとの風土を知ることも不可欠です。

今後もPriv Labでは、3rd Party Cookie関連を含むプライバシーを巡る最新情報をご紹介していきます。

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