個人情報保護士とは?情報管理の資格が企業にもたらすメリット
個人情報保護の専門家として注目されつつある「個人情報保護士」。昨今の急激な個人情報保護の流れに対応できる貴重な人材であり、速やかに自社へ確保することで、競合他社に対して大きなアドバンテージを得ることができます。
ここでは、個人情報保護士の概要や主な関連資格、企業における役割と価値についてご説明します。
個人情報保護士とは?
個人情報保護士は、個人情報保護に関する高度な知識を持ち、実務において個人情報の運用・管理を適切におこなえる専門家です。一般財団法人「全日本情報学習振興協会」が主催する「個人情報保護士認定試験」の合格者が、個人情報保護士として認定されます。
2005年4月に個人情報保護法が施行されたことを受け、同年10月に第1回試験がおこなわれました。以後、「個人情報を取り扱える人材の確保」を急務とする企業からの高いニーズにより、年4回開催され現在60,000人以上が個人情報保護士として認定されています。
個人情報保護士の有用性は、取得者・企業の双方から評価されており、2013年には日本経済新聞と日経キャリアマガジンが調査した「取得している資格の満足度ランキング」にて2位に輝きました。
パナソニック株式会社や日立ソリューションズグループなどの大手企業では、積極的に社員へ個人情報保護士の資格を取得させています。日立ソリューションズグループは、全社員およそ15,000人のうち800人超が個人情報保護士と報道されたこともあるほどです。課長職以上で個人情報保護士を各部に配置し、個人情報の適切な管理に努めています。
2018年5月のGDPRの施行(EU圏)、2022年4月までに全面施行予定の改正個人情報保護法(国内)など、個人情報保護に関する気運は国内外問わず高まる一方です。今後、個人情報保護士の重要性はより増していくと考えられます。
個人情報保護士になるには?
個人情報保護士になるためには、前述の一般財団法人「全日本情報学習振興協会」が実施する認定試験に合格する必要があります。以下の項目について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 試験の受け方や実施回数
- 試験内容
- 合格率
試験の受け方や実施回数
個人情報保護士認定試験の基本情報は以下のとおりです。
【個人情報保護士認定試験の基本情報】
開催地域 |
札幌・仙台・東京・横浜・埼玉・千葉・名古屋・津・大阪・神戸・福岡・オンライン受検 |
年間実施回数 |
4回 |
受験資格 |
国籍・年齢等の制限なし |
検定料 |
通常11,000円 学割時7,700円 (いずれも税込)※別途団体割引あり |
支払い方法 |
クレジットカード・銀行振り込み・払込票 |
試験時間 |
150分 |
問題数 |
全100問(課題1:50問、課題2:50問) |
出題形式 |
マークシート形式(筆記) ※オンライン試験はパソコン入力によるマークシート形式 |
合格点 |
課題1、課題2それぞれ正答率70%以上 ※試験難易度により引き下げの可能性あり |
合格発表 |
試験から約1ヶ月後にホームページで公表 |
出典:全日本情報学習振興協会「個人情報保護士認定試験 試験内容・試験日程」より抜粋・改変
2021年9月時点で、年内は第65回試験(12月12日試験日)、翌年は第66回試験(3月13日試験日)が開催予定です。
試験の受け方は簡単で、公式サイトからのインターネット手続き、または郵送手続きにより申し込みができます。受験希望の日程や氏名、連絡先、支払い方法などの情報を伝え、試験日までに決済を済ませるのみです。詳細は以下の申し込み方法の項よりご確認ください。
>>全日本情報学習振興協会「個人情報保護士認定試験 試験内容・試験日程」
なお、オンライン試験を希望される場合は、試験日までに「視野角が120度以上の広角Webカメラ」を用意する必要があります。カメラは無料貸し出しが受けられる他、有償による販売もあり、どちらも以下より申し込み可能です。
>>全日本情報学習振興協会「オンライン・ライブ検定試験の開催について」
試験内容
認定試験では「課題1:個人情報保護の総論」「課題2:個人情報保護の対策と情報セキュリティ」と2つの分野に分けて個人情報保護全般に関する広範な知識が問われます。具体的な出題内容は以下の通りです。
【個人情報保護士認定試験の出題内容】
課題1:個人情報保護の総論 |
|
課題2:個人情報保護の対策と情報セキュリティ |
|
出典:全日本情報学習振興協会「個人情報保護士認定試験 試験内容・試験日程」
改正個人情報保護法に関する内容はもちろん、マイナンバーや情報セキュリティのような現代のプライバシー保護に欠かせない知識の習得が求められます。回答はマークシート方式です。
合格率
個人情報保護士認定試験の合格率は過去全体で37.3%となっています。 試験1・試験2でそれぞれ正答率70%以上であれば合格ですが、半数以上の方が不合格となっています。個人情報の取り扱いや情報セキュリティに関する事柄が複雑化しており、正しい知識を身に付けることの難しさが結果に表れているといえるでしょう。
また、合格者の平均年齢は37歳と公表されています。学生や若者よりも、ある程度社会人経験があり長年実務で個人情報を取り扱ってきた方を中心に、資格を取得していることが読み取れます。
情報管理にまつわる主な資格
個人情報管理に関する資格はほかにも存在します。ここでは主な関連資格を紹介します。
情報セキュリティ管理士
情報セキュリティ管理士は、個人情報保護士と同様に一般財団法人「全日本情報学習振興協会」によって認定される資格です。「なぜ情報セキュリティが必要なのか」「実際にどのような情報流出事故が起こっているのか」「防ぐために実務上で気をつけるべきポイントは」など、社員一人ひとりが理解するべき個人情報管理に関する知識が広く問われます。
上級個人情報保護士
個人情報保護士の上位資格が「上級個人情報保護士」です。個人情報保護士向けの指定講習へ参加し、レポート審査を通過した人のみが認定されます。指定講習では、法律部分のより深い理解と実践力の向上が求められます。単純に条文を理解するだけではなく、ビジネスシーンに応じて適切に知識を活用できる「個人情報保護のスペシャリスト」を目指したい方向けの資格です。
一般社団法人日本プライバシー認証機構(JPAC)認定資格
「従業員の個人情報漏洩を防ぐために生まれた」のがJPACの認定資格です。役員向け(CPO)・管理者向け(CPP)・一般社員向け(CPA)の3種類が用意されており、それぞれの立場ごとに必要な個人情報保護の知識が問われます。
認定資格取得者数が約16,000人、利用企業数が約4,000社と国内最大級の規模を誇る情報管理の資格です。特にCPOは、キリンビールやNTTドコモなど大手企業で経営に携わる人々も取得しており、本資格の有用性がうかがえます。
>>「個人情報保護」対応、準備できていますか?今すべき対策を知りたい方はこちら
企業における個人情報保護士の役割
個人情報保護士をはじめとする情報管理に関する有資格者は、企業にどのような役割やメリットをもたらすのでしょうか。
「個人情報保護に尽力している」と対外的にアピール
ベネッセやリクナビのような、個人情報の取り扱いを誤り社会問題に発展した事例もあり、個人情報保護の意識はいっそう高まっています。ユーザーはもちろん、企業同士も取り扱い方の確認が欠かせません。
社員に個人情報保護士などの資格取得を進めている、あるいは取得者に業務をおこなわせていると宣伝することで、「個人情報保護を意識している企業」であると対外的なアピールができます。ユーザーや取引先企業からの信頼獲得につながり、経営上のメリットにもなります。
社員全体の個人情報保護意識を向上
企業全体の個人情報保護に対する精度を高めるためには、対外的なアピールだけでなく社員全体、企業に所属する一人ひとりの意識を向上させることが大切です。
具体的な対策としては、日立ソリューションズグループのように、各部署に個人情報保護士を配置するのが有効です。特に人事や労務のような個人情報を頻繁に取り扱う部署では、個人情報保護士の専門知識が大いに役立つでしょう。
将来的に「個人情報保護のリーダー」になりえる
社員一人ひとりへの啓発に加えて、多様化・厳密化する現在の個人情報保護に関するルールを順守するためには、専門知識を有する責任者の設置が必須だと考えられています。2020年8月に総務省と経済産業省により策定された「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.0」でも、企業におけるプライバシー保護責任者の設置が必要だと明言されました。
日本企業も対象となるGDPR(EU一般データ保護規則)も、データ保護責任者(DPO)の設置を企業に求めています。2020年5月には、ヤフー株式会社がDPOを新設し話題となりました。
このような流れから、将来的な個人情報保護責任者の設置は、ほとんどの企業にとって避けては通れない問題だといえます。実務による経験も必要となるため、個人情報保護士の資格を取得後すぐに責任者となれるわけではありませんが、将来的なリーダーになりうる人材として期待できます。
まとめ
個人情報保護士は、個人情報保護に関する高度な知識を持ち、実務での管理・取り扱いをおこなえる専門家です。将来的には、個人情報保護のリーダーとして企業に必要な存在となります。
個人情報保護法の改正やGDPRの施行に代表されるように、現在は世界的に個人情報を保護する意識が高まりつつあります。個人情報管理に関する有資格者の雇い入れは、今後ますます欠かせないものとなっていくでしょう。
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