パーソナルデータストア・PDSの仕組み|メリットや情報銀行との違いを解説

データ管理・活用 2021.01.25
パーソナルデータストア・PDSの仕組み|メリットや情報銀行との違いを解説

個人が自らのデータを管理する「パーソナルデータストア」と呼ばれる仕組みをご存知でしょうか。

本記事では、パーソナルデータストアの仕組みや活用のメリット、情報銀行との違いを説明します。パーソナルデータストアの普及によってどのような社会が実現されるのかを把握し、私生活や事業に取り入れるための準備を進めましょう。

1. パーソナルデータストア(PDS)とは?

パーソナルデータストアは、個人が自らのパーソナルデータ(個人に関するデータ)を保存、管理する仕組みです。総務省では次のように定義されています。

"他者保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するもの"

引用:データ流通環境整備検討会「AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめ(案)

私たちは普段、ニュースメディアや通販サイト、動画視聴アプリなど多くのサービスを利用します。多くの場合、サービスの利用時に、提供元の事業者にパーソナルデータを預けることになります。

サービスの提供元に預けたパーソナルデータを活用できるのは管理している事業者のみです。しかしこの状態ではデータが持っている潜在的な価値を発揮できているとはいえません。

パーソナルデータストアに情報を集約して管理することで、サービスの利用により直接パーソナルデータを提供している企業以外(以下のX社)にもデータ活用の機会を提供できる構造を作られます。

パーソナルデータストアに情報を集約して管理する

出典:データ流通環境整備検討会「AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめ(案)

パーソナルデータストアを活用し、個人がパーソナルデータを必要とする事業者へ情報提供をおこなうことで、事業者から情報提供者や社会へ便益を還元するサイクルが実現します。

2. パーソナルデータストアの種類・仕組み

パーソナルデータストアの種類は、以下の2つに大別されます。

種類

概要

分散型パーソナルデータストア

個人が自らの端末でデータを管理するため、データを一ヶ所に集中しない点でセキュリティ上のリスクが低く、データ保管用のサーバーも少額で手配可能

集中型パーソナルデータストア

事業者が提供するサーバーでデータを管理し、データが一ヶ所に集中するためセキュリティ上のリスクが高く、サーバーの運用コストが多額になる傾向

分散型パーソナルデータストアは、個人が自らの端末にデータを蓄積し、管理する形態のパーソナルデータストアです。個人が自らデータを管理するため労力がかかるものの、セキュリティ上のリスクとサーバー運用コストが小さいという点で優れています。

一方、集中型パーソナルデータストアは、事業者が提供するサーバーにデータを蓄積し管理する形態のパーソナルデータストアです。大規模なサーバーを用意して一ヶ所にデータを集めるため、セキュリティ上のリスクと運用コストは相対的に大きくなりますが、個人にかかる負担が小さい点で優れています。

パーソナルデータストアを用いたデータのやり取りは、以下のような構造となっています。

パーソナルデータストアを用いたデータのやり取りの構造

出典:データ流通環境整備検討会「AI、IoT 時代におけるデータ活用ワーキンググループ中間とりまとめ(案)

分散型パーソナルデータストアは中央管理者がいない形態であり、集中型パーソナルデータストアは中央管理者がいる形態とも言い換えられます。

3. 情報銀行とパーソナルデータストアの違い

パーソナルデータと似た仕組みのサービスで近年注目されているのが「情報銀行」です。このサービスは個人から預かったパーソナルデータを管理し、個人による指示や指定された条件に基づいてデータを第三者に提供する流れです。

情報銀行とパーソナルデータストアは、データの第三者提供を個人が担うか否かで定義が異なります。

  • パーソナルデータストア:情報の管理、第三者提供の機能を有する仕組み
  • 情報銀行:情報の管理、個人の指示に基づき情報の第三者提供をおこなう事業

パーソナルデータストアは、データの管理・第三者提供を実施できる「仕組み」であり、取り扱いの決定権は個人にあります。対する情報銀行は、個人に代わってデータの管理・第三者提供をおこなう「事業」を指しています。

4. パーソナルデータストアを活用するメリット

パーソナルデータストアの活用により個人が得られるメリットは以下のようなものです。

活用分野

メリットの一例

観光

個人の生活情報や趣味嗜好に応じて、好みにマッチした飲食店や商品情報を得られ、サービス提供側から個人にあわせた提案を受けられる

金融・*フィンテック

資産や決済、家族に関する情報を集めて、資産状況の一元管理ができるほか、世帯に合わせた資産運用やサービスの提案を受けられる

医療・介護・ヘルスケア

健康や生活に関する情報を集めて、生涯にわたり健康情報を管理できるほか、個人に適した医療・保険サービスの提案を受けられる

*フィンテックとは、金融とテクノロジーを結び付けること。身近な例ではスマートフォンの送金サービスなどが該当します。

上記のように、個人はより自身に適したサービスを受けられるようになり、サービス提供側も従来よりも付加価値の高い提案が可能となります。サービスのミスマッチが減少し、経済の健全化と活発化が期待できるのです。

5. パーソナルデータストアは今後どうなる?

パーソナルデータストアは今後、情報銀行の発展にともなって普及が予測されます。しかし、2020年11月時点での運営体制が認定基準をクリアしており、かつ安心安全なサービスを提供している場合に与えられる「通常認定」を受けている情報銀行は1件しかありません。パーソナルデータストアのユーザーが増加するのはこれからだと予想されます。

とりわけ日本では、データの利活用に対する一般の人々の認識は高いといえず、浸透には時間がかかりそうです。

以下は4ヵ国の20代、30代、40代、50代、60代以上の男女から各100件、合計1,000件(1ヵ国あたり)のアンケート結果を回収した「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」をもとに、総務省によって作成されたデータ流通・提供にまつわるデータです。

データ流通・提供にまつわるデータ

出典:総務省「5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築

上記は、「消費者がパーソナルデータストアや情報銀行を利用したいか否か」を調査し、利用に対する意向の回答結果を国別に示したグラフです。回答結果によるとパーソナルデータや情報銀行を利用したくないと考える人の割合が、外国に比べて日本は高くなっています。

  • 既存の仕組みで問題ない
  • 自らの責任範囲や負担が大きい
  • 企業に情報管理を任せたほうが安心
  • 提供しているデータの管理・提供先に関心がない
  • 自分で情報を管理すると漏えいした場合が不安

今後、パーソナルデータストアの普及拡大を図るなら、上記を認識し不安を解消することが最優先課題となりそうです。

6. まとめ

パーソナルデータの流通を促進し、事業者・情報提供者・社会がともに便益を得られるパーソナルデータストアは、今後の広まりが期待される仕組みの一つです。個人と事業者が相互に価値提供し豊かな社会を実現するための技術であり、その認知や信用の拡大に今後も注目しておく必要がありそうです。

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