ITPとは?Web広告に与える影響と対策方法
Apple社のブラウザであるSafariにITPが実装されたことで、Web広告業界は変革を求められています。
ここでは、ITPの概要と過去のアップデート内容、ITPがWeb広告に与える影響についてご説明します。
1. ITPとは?
ITP(Intelligent Tracking Prevention)は、Apple社のブラウザ「Safari」に実装されているプライバシー保護を目的として、ユーザーの行動を追跡・分析するトラッキングの制限を行う機能です。ITPは、サイトに訪問したユーザーの情報を一時的に保持する「Cookie(クッキー)」の働きを制限、あるいは無効化・削除する役割を担います。
日本国内ではiPhoneのシェアが大きく、iPhoneは純正ブラウザとしてSafariを実装しているため、結果としてITPを利用するユーザーは多いと考えられています。事実、株式会社ウェブレッジの調査によれば、2020年3月時点におけるスマートフォンブラウザシェアは、Safariが全体の61.26%を占めているとのこと。
ITPは、徐々に制限の内容が厳格化されており、すでに複数回のアップデートが実施されています。
ITPのアップデートによる変化
ITPはたび重なるアップデートを経て、以下のように変化してきました。
ITPのバージョン |
主な変更点 |
ITP1.0:2017年9月 |
最後のインタラクションから24時間で3rd Party Cookieが無効化。インタラクションの有無にかかわらず、発行から30日で削除。 |
ITP2.0:2018年9月 |
3rd Party Cookieは即無効化されて、発行から30日で削除。また、4つ以上のドメインからリダイレクトされている1st Party Cookieは、3rd Party Cookieと同様の扱いになり無効化・削除。 |
ITP2.1:2019年3月 |
JavaScriptにより生成された 1st Party Cookieは、最後のインタラクションから7日間で削除。 |
ITP2.2:2019年4月 |
JavaScriptにより生成された 1st Party Cookieは、特定の条件下において最後のインタラクションから24時間で削除。 |
ITP2.3:2019年9月 |
特定の条件下において、最後のインタラクションから7日間でストレージデータ(ローカルストレージ)が削除。インタラクションがない場合は即削除。 |
Full Third-Party Cookie Blocking and More |
3rd Party Cookieはすべてブロック。特定の条件下において、最後のインタラクションから7日間でセッションストレージを含むいくつかのストレージデータが削除。インタラクションがない場合は即削除。 |
参考:Digital Marketing Lab「ITP(Intelligent Tracking Prevention)とは」
ユーザーが入力したID・パスワードを保存する1st Party Cookieや、広告配信の最適化のために利用される3rd Party Cookie、Webページのデータを保持するストレージデータに対する規制が徐々に強まっている様子を読み取れます。
2. ITPがWeb広告に与える影響とは
ITPがCookieやストレージデータの制限を行うことで、Web広告業界にはネガティブな影響がもたらされます。この悪影響は、主に3rd Party Cookieの規制によるものです。
3rd Party Cookie(サードパーティークッキー)とは
3rd Party Cookieは、ユーザーが訪れたサイト以外が発行するCookieのことです。
たとえば、サイトAに訪問したユーザーに対して、サイトAが発行したCookieは1st Party Cookieです。これは、ログイン時にもちいるID・パスワード、通販サイトにおけるカート内の情報などが該当します。
対して、サイトAに訪問したユーザーに対して、サイトA以外が発行したCookieが3rd Party Cookieです。外部の第三者により付与されるため、三人称を意味する「3rd(サード)」という言葉がもちいられています。
1st Party Cookie は、サイトA内で収集したユーザー情報を保持する一方、3rd Party Cookieは複数サイトをまたいでユーザー情報を横断的に管理することが可能です。そのため、3rd Party Cookie は「ユーザーがどのような行動をしたのか」といったデータを多分に含んでおり、1st Party Cookieに比べて個人情報としての色が強くなっています。
3rd Party Cookieは上述のような特性を持っているため、主に企業がユーザーに応じて広告を出し分けるときに利用されます。ブラウジングしている際、過去に閲覧したホームページの商品がどのサイトを開いても広告として表示される現象は、3rd Party Cookieによるものです。
Cookieについてはこちらも併せてご覧ください。
>>Cookie(クッキー)の意味とは?マーケティング担当者の必要知識を解説
3rd Party Cookieの規制により機能不全となるWeb広告も
ITPにより3rd Party Cookieが規制されたことで、これまでターゲティングを3rd Party Cookie に頼っていたWeb広告は従来通りの運用が困難となりました。
また、Cookieを使ったCV(コンバージョン=成約)数の集計、正確なユーザーの行動データを取得できないケースもあり、分析にもちいる情報収集にも弊害が出ています。
Googleは3rd Party Cookieの廃止も公表しているため、今後3rd Party Cookieが以前のように活用できる機会が訪れることはない見込みです。
3. 今後のITPへの対応・対策
ITPへの対応としては、以下の2つが挙げられます。
- 各サービスに利用するタグを常時最新のものに更新
- Cookieに依存しない代替案の登場をキャッチアップ
Google広告やYahoo!広告を利用している場合、測定タグを最新のものに更新するまで正常に機能しない事例が確認されています。最新バージョンのITPに対応するため、いずれのサービスもタグの見直しが必須です。
また、Cookieの規制を受けて、Cookieに依存しないマーケティング手法が登場しつつあります。Googleが3rd Party Cookieの代替案になるとして公表している「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」はその1つです。
まだ、詳細な仕様については判明していないものの、プライバシーサンドボックスはユーザーのプライバシーを守りつつ、広告業界にとって有益な情報を収集できる技術になるとのこと。ただし、プライバシーサンドボックスは、Cookie制限の代替案となる手法の1つに過ぎません。
同様の技術は広く開発が進んでいるため、今後は幅広くアンテナを張って新たな代替案をいち早く取り入れる姿勢が求められます。
4. まとめ
Cookieの規制を始めとするプライバシー保護の流れは、EUが施行したGDPRを皮切りに拡大していくことが予想されます。
情報収集とプライバシー保護の関係はセンシティブな問題であり、今後も制限・規制についての大きな動きがたびたび起こるものと思われるため、動向が一段落するまで関係者は情報へ敏感になるべきでしょう。
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