セミナーレポート:これからの企業に求められるプライバシー対策と適切なコミュニケーション活動

個人情報保護法法律 2021.08.31
セミナーレポート:これからの企業に求められるプライバシー対策と適切なコミュニケーション活動

Priv Tech株式会社(以下、Priv Tech)は、株式会社アンティル(以下、アンティル)と「改正個人情報保護法を見据えたプライバシー対策と適切なコミュニケーション活動」をテーマにWebセミナーを開催しました。

プロフィール

株式会社アンティル 取締役 久井 直人

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新卒で株式会社ベクトルに入社。その後子会社である株式会社アンティルに配属され各種PR業務に従事。中国への駐在を経て、帰国後は戦略プランニング部門に在籍し、コミュニケーションの戦略プランニングおよび実施マネジメントを担当。再びアンティルに戻り、企業・自治体の各種コミュニケーション活動のサポートを行うほか、経営層に向けたトレーニングや危機管理広報にも従事している。

株式会社Priv Tech 代表取締役 中道 大輔

中道さんプロフィール写真

ソフトバンク、ヤフーを経て、現職。データビジネス関連事業のビジネス・ディベロップメントに従事。現在は、Priv Techにてプライバシー・ファーストなデジタル社会を目指し、事業を展開。

"真っ当な"コミュニケーションが求められる3つの理由

結論からお伝えすると、これからの企業に求められるのは"真っ当な"コミュニケーションだと考えています。"真っ当さ"に行き着いたきっかけは、プライバシーを取り巻く現在の状況とイマの時代のコミュニケーションを鋭く捉えていると思った3冊の本です。

詳しく理解するために、まず時代背景から解説します。

背景1: Cookie規制

背景の1つ目はCookie規制です。3rd Party Cookieの規制や改正個人情報保護法など、個人情報取得にまつわる部分の規制問題が大きく関係しています。

ここ数年でいわゆるリターゲティング・リマーケティングなど、アドネットワークを活用した広告運用が頻繁に行われていましたが、今後そうしたマーケティング手法は規制によって難しくなっていきます。

背景2: 広告なしの検索エンジン「neeva」の登場

neeva(ニーバ)という広告がまったく表示されない検索エンジンをご存じでしょうか?
Googleの広告部門トップを務めていた元シニア・バイス・プレジデントが開発し、現在試験的にアルファ版のサービスを提供しています。2021年の7月から9月の間に正式リリースされる予定のようです。
neevaはいわゆるリスティング広告やGoogle広告が表示されず、サブスクリプション型で運営されています。

neevaの登場から「お金を払ってでも広告がない検索エンジンを使いたい」と考える人が一定数いることがわかります。

背景3 :利便性を超えた「気持ち悪さ」

パーソナライズされすぎた情報提供は「利便性」よりも「気持ち悪さ」をもたらします。どこまで個人情報が取られているのか。広告表示される商品はたしかに自分が欲しいものです。しかし先を読まれている気がしてなんとなく気持ち悪さを感じます。

少し不快になるような必要以上の広告も存在しており、直近の1~2年は「広告があったら便利」という提案の範疇を超えているように思います。
広告が表示されることで企業に対して「恣意的である」とネガティブなイメージを持ってしまいます。企業がブランディングをするうえでも、パーソナライズされ過ぎた広告はよくありません。

時代背景の理解におすすめの3冊

適切なコミュニケーション活動に関する時代背景を理解するために、役に立つ書籍を3冊紹介します。

  • 『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す』山口周(著)
  • 『ナラティブカンパニー 企業を変革する物語の力』本田哲也(著)
  • 『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』原野守弘(著)

『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す』

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1つ目は山口周氏の『ビジネスの未来』です。「高原社会」の到来と、高原社会における課題としての"エコノミーにヒューマニティを取り戻す"こと。そのカギとなるのは経済合理性ではなく、「喜怒哀楽に基づいた衝動で消費・行動」するような社会への転換だと山口氏は述べています。

『ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力』

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もう1つは、PRストラテジスト本田哲也氏の書籍『ナラティブカンパニー』です。「ナラティブ」の言葉は難しく感じられるかもしれませんが、本書では「物語的な共創構造」と定義されています。

本書は「PR」という観点から言えばもはや全体が教科書的なものと言えるのですが、今回の話において重要なポイントは、オーセンティシティ、日本語でいうと「正当性」に関する部分です。

オーセンティシティを言い換えるならば「言行一致」、つまり言葉と行動が一致していること。今の時代の企業も、そして個人にも求められる非常に重要な要素だと言えます。

『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』

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最後に紹介するのは、著名クリエイターである原野守弘氏の著書『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』です。本書の中で今回特筆すべきは、「人間は感情でしか動かない」「偉大なブランドは自分のことではなく自分の愛するものについて語る」「地声で語る」と書かれている部分です。

3冊の本はそれぞれテーマは違えども、根底に共通点があるとそれぞれを読了したあとで感じました。

  • 山口周氏の書籍にある「ヒューマニティ」や「喜怒哀楽にもとづく衝動で消費・行動」 すること
  • 本田哲也氏の書籍にある「オーセンティシティ(言行一致)」、そしてそもそも「ナラティブ」の概念そのもの
  • 原野守弘氏の書籍にある「人間は感情でしか動かない」「地声」の大切さ

時代を代表するコミュニケーターの方々が語っている内容はまさに「今の状況」を的確に表しています。

こうした書籍や時代背景から行き着いたのが"真っ当さ"でした。

企業は目的を持ち、ゴールに向かって行動をしないといけません。成果を出すためにはしっかりしたロジックが必要ですが、ロジックだけで人は動かず、ときには感情も入ってきます。

山口氏の語るように、経済合理性だけで人を動かす時代から、改めて、いかに人々の感情に訴えるかが問われています。そして、それを自分の声で言うことと言行一致が極めて重要な点です。

プライバシー対策の鍵となる「コミュニケーション」の役割

教科書的な話になりますが、「コミュニケーション」についてここで少し詳しく解説します。

生活者が物を買う(購買行動をとる)とき、現状の商品・サービスに対するイメージにともなって動いています。「現状のイメージ」があって、「現状の購買行動」が起きていますから、「理想の購買行動」を促すためには、そのための「理想のイメージ」を作っていくことになります。イメージを変える、パーセプションチェンジさせるために、PRや広告を含めた「コミュニケーション」が寄与するわけです。

重要なのはPESOの組み合わせとリバランス

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コミュニケーションは極論、コンテンツとメディアの掛け合わせです。
「生活者に情報を届ける媒体」であるメディアは、その特性から4つに分類されます。それぞれの頭文字を取って"PESO"(ペソ)と呼ばれていますが、その特徴について述べるのはここでは割愛します(宣伝会議さんの記事など参考にされてください)。

コミュニケーションにおいて、4つをどう組み合わせてどう活用するかがポイントになりますが、時代とともにその効果的な使い方は変わってきています。
振り返ってみると、マス広告全盛の時代を経て、10年ほど前はいわゆる「戦略PR全盛時代」を迎えました。テレビの健康情報番組で納豆が体に良いと言われれば翌日にはスーパーで納豆が売りきれました。第三者の発信による"土台作り"が重要視されていたのです。
PAID一辺倒だったものが、EARENDをいかに獲得していくかが問われるようになりました。

そして5年ほど前をターニングポイントとして、スマートフォンや付随するSNSなどの普及にともない、情報の圧倒的な増加、多様化が一気に進んでいます。
特にその中でも、一般人でありながらユーザーに対して大きな影響力をもつ「情報教祖(インフルエンサー)」が出てきました。一昔前とは違って、個人の情報発信が重要になっています。
また最近では、情報があふれる現代社会において企業の魅力を適切に伝え、顧客ユーザーとの長期的な関係性を保つための土台として企業が運営するOWNEDも重要視されています。

このように時代の流れを見ながら、それぞれのメディアの特性をベースとして、どのように組み合わせるかがアウトプットのメディア設計では大切になります。

PR活動においてのPDCA

ここで改めてパブリック・リレーションズ(PR)について解説しておきます。パブリック・リレーションズとは「組織や個人が理想的な関係を構築するための行動や考え方」を指し、井之上PRの井之上氏は「双方向性コミュニケーションと自己修正をベースとしたリレーションズ活動」と定義しています。

つまりPRとはその定義枯らして、コミュニケーションを取りながらPDCAサイクルを回すことが重要になるわけです。PESOの場合、適切なコンテンツを選んだうえで、発信内容に対する反響やフィードバックを見ること。そしてコンテンツに還元することなどが該当します。

時代とともに変化する「PR」の考え方

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PRのあり方は時代とともに変化しています。

例えば、従来のPRでは以下の考えが主流でした。

  • トレンドは作るもの
  • ポジションはナンバーワンを取るべき
  • どうやるか、の手法論としてのPR
  • PRは広く届けるためのもの

一方で現在の、そしてこれからのPRは、以下の考え方が重要になってきています。

  • トレンドは定着させるもの
  • ポジションはオンリーワンを目指す
  • なぜやるか、が最重要

我々としても今後のPRでは、こうした部分を見ながらコミュニケーションの組み立てをする方針です。

Q&A

ここからはWebセミナーに参加した方々からの質問に回答していきます。

広告に対する個人の考え

Q:具体的にユーザーが嫌悪感をもっていることがわかるデータ(アンケート結果など)はありますでしょうか?

久井

まだ調べられていないかもしれません。今回の話では、業界の著名な方々がそれぞれ語られた共通点や感覚として「ユーザーが広告に抵抗感を持っている」と話しました。グループ会社などに聞けば出てくるかもしれないので、具体的なデータがあれば改めてお出しします。

PRに関する問い合わせ

Q:PRは現場ではなく広報の部署が管轄していることが多いと思います。具体的にはどちらの部署からのご相談が多いですか?

久井

両方ありますね。ターゲティング広告を打っているデジタルマーケティングの部署からの悩みと、マーケティングの部署から相談を受けた広報の部署からの相談もあります。

中道

マーケティングは難しくなっているので、マーケティングだけでなくPRやコミュニケーションプランの相談も増えていくのでしょうね。

IDFAやAIDに紐づくデータ規制はCookieとは別軸か

Q:IDFAやAAIDに紐づくデータに関する規制の流れは、Cookieに関する規制とは別に存在しますか?また、どういった対応を取りうるものでしょうか?

中道

IDFAは簡単にいうとアプリですね。CookieはWebの話なので、アプリは別の仕組みです。ただ、個人、プライバシーに関わるデータを外に出さないために、AppleやGoogleが規制を詰めていて、アプリの領域も同じような流れで進んでいます。
また対応方法に関しては、アプリでも同意の取り方など規制が厳しくなってくると思います。Googleのほうでも、今後アプリ上で同意管理の仕組みを作るなどの対応が必要かと思います。

まとめ

今日の結論は、冒頭でお話ししたように「これからの企業には"真っ当な"コミュニケーションが求められる」です。弊社では、先ほど申し上げた事例のオウンドメディアの運営や、PESOのメディアを組み合わせたプランニングをお手伝いしています。

さらに上流からのコンサルティングも可能ですので、お気軽にご相談ください。

株式会社アンティルへのお問い合わせ

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株式会社アンティルはPR業務を中心に、お客様の売上向上までの導線作りをご提案しています。展開している事業は以下のとおりです。

  • PR企画立案および実施
  • PR業務代行・コンサルティング
  • ブランディング業務
  • IRコミュニケーション
  • リスクマネジメント業務
  • マーケティングリサーチ業務
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※所属およびインタビュー内容は、取材当時(5月19日時点)のものとなります。

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