セミナーレポート:プライバシー保護のロードマップと今後のマーケティング戦略
Priv Tech株式会社(以下、Priv Tech)は、株式会社ペンシル(以下、ペンシル)と「マーケターが知っておくべきプライバシー保護の最前線」をテーマにWebセミナーを開催しました。
プロフィール
株式会社ペンシル 執行役員CSO 佐藤 元泰
大手総合IT企業を経て2008年ペンシルに入社。現在はコンサルティング部門を統括。一貫して顧客への価値提供、顧客体験の向上のための戦略立案、実行支援をおこなっている。エバンジェリスト活動にも力をいれており、大手企業の社員研修特命講師やさまざまなイベントで登壇している。ダイレクトアジェンダ2019、2020カウンシル、モデレーター。 |
株式会社Priv Tech 代表取締役 中道 大輔
ソフトバンク、ヤフーを経て、現職。データビジネス関連事業のビジネス・ディベロップメントに従事。現在は、Priv Techにてプライバシー・ファーストなデジタル社会を目指し、事業を展開。また、親会社ベクトルにて、6月からCPO(Chief Privacy Officer)に就任、グループを横断しユーザーのプライバシーを守るべく組織作りをおこなう。 |
セミナーの目的「個人情報保護やプライバシー対策の必要性」
現在パーソナルデータの取り扱い方によっては、プライバシー保護が脅かされることが社会的な問題となっています。インターネットをビジネスに取り入れるすべての企業にとって、データの活用とプライバシーの保護を両立させる「プライバシーテック」の仕組みを取り入れることが求めらます。
2022年に施行される改正個人情報保護法ではパーソナルデータに対する個人の権利が強化され、法令違反に対するペナルティも最大で30万円から1億円にあがります。今後企業はパーソナルデータの取得や取扱いにより一層の配慮が求められます。
個人情報・プライバシーの保護の動きに対する未来年表佐藤氏は、2020年からの約1年で取り組むべき内容が明確化してきたと説明します。
時期 | 内容 |
---|---|
2020年4or9月 | ITP最新バージョン |
2020年6月 | CCPAの猶予期間終了 |
2021年? | プライバシーサンドボックスの実装 |
2021年2月 | DtoC&RETAIL Summit 2021 開催 |
2022年頃 | 個人情報保護法の改正 |
2022年頃 | ChromeでのCookieレスの実現 |
2021年時点での実際の年表は下図のとおりです。
時期 | 内容 |
---|---|
2020年6月 | 個人情報保護法の改正法交付 |
2020年12月 | 決定権の引き上げ |
2021年 | 改正個人情報保護法のガイドライン発表 |
2022年4月 | 改正個人情報保護法の施行 |
2022年 | 3rd Party Cookieの廃止が決定 |
佐藤
上記の表は2020年のセミナーでお伝えしていた内容です。コロナで先の見えない状態でしたが、やるべきことが明確になってきました。2020年からの1年間で変化した内容を中心にお話します。
個人情報・プライバシーの保護の変化
佐藤氏は、個人情報やプライバシー保護の考え方はプライバシー関連法制の整備やプラットフォーマーの動向により適正化されていくと語ります。
- ビジネスの主体者を保護して優先する
- オリジナリティのないアフィリエイトのSEO評価低下
- 第三者の不正利用を防ぐことはサイト運営側の義務
- 第三者に情報が渡ることを良しとしない世界観に変化
佐藤
個人情報・プライバシー保護はネガティブにとらえがちですが、実はチャンスなんです。今後は、よりオリジナルの情報が重視されます。そしてビジネスの主体者を保護し、優先される流れになります。個人情報を保護して第三者の不正利用を防ぐことはサイト運営側の義務と、とらえるとよいと思います。当然ですが、Webの利用や情報取得、取引先とユーザー間の情報のやり取りは自由でしたが、今後は情報が第三者に渡ることを良しとしない世界観に変化していきます。
今後のマーケティング戦略で理解すべき3つのポイント
佐藤氏は、今後のマーケティング戦略で理解すべきポイントは3つあると語ります。
佐藤
対策の方針は今後さらに難しくなります。現在の集客手段も技術的に陳腐化してき、Cookieのような機能は非常に使いづらくなります。最新のプロダクトを優先的に導入し、自社内にノウハウを貯めていく必要があります。
- 成果報酬に変わる新しい仕組み
- オウンドメディアの目的
- オンライン・オフラインの統合
- 2020年6月 個人情報保護法の改正法交付
- 2020年12月 決定権の引き上げ
- 2021年 改正個人情報保護法のガイドライン発表
- 2022年4月 改正個人情報保護法の施行
- EU圏内に子会社や支店を保有している場合
- EU圏内に商品やサービスを提供している場合
- 2020年9月 ヤフー広告
- 2020年10月 FacebookのコンバージョンKPI
- 2021年3月 Google広告の計測パラメータ
- 法律
- ブラウザ
- 広告
- コンサルティング
- プロモーション
- システム開発
- 制作
- 運用
- 分析・解析
- 無料相談
- 社内向け勉強会の実施
- サイトのタグやCookieの状況調査
- 対応ポイントの洗い出し
- 同意管理ツール導入支援
- データ活用コンサルティング
- 海外ツールは同意取得バナーがごちゃごちゃしていてわかりにくい…
- 誰にどこまで同意を取ったか管理するのが大変…
- ツールを導入するたびに手作業で全部同意を取り直すのは面倒…
- 同意は管理できても他社システムを上手く連携して使えないと…
2020年頃まではCookieによって、さまざまなサイトへ行き来するユーザーの動きを追うことができましたが、今後は難しくなります。1回の接触でお客様との関係性をどこまで高められるかが重要になります。また成果報酬型は減少していくことが想定されています。今後メディアタイアップや純広告のような取り組みで成果を出せる仕組みを作っていくことも必要です。
オウンドメディアもコンバージョンの獲得だけを考えるのではなく、マーケティングデータの情報収集も必要となるので、ミクロ、マクロのデータを含めて抑えていく必要があります。
さらにオウンドメディア外のユーザーの動向が取得しにくくなっていることから、オンラインとオフラインの統合も、より一層加速していく時代となっていくと考えています。
プライバシー保護ロードマップ
下図はプライバシー保護のロードマップです。法律、ブラウザ、広告、全体で区切っております。
上記のような流れになります。
GDPRとは
GDPR(EU一般データ保護規則)とは、EU圏内の個人情報の取扱いについて詳細に定めた規則です。
GDPRについての詳しい説明は下記リンクから確認できます。
GDPRとは?その定義と日本企業がとるべき対策をチェックしよう
EU圏外でもGDPRの対象に
GDPRはEU域内に物理的施設を保有していない場合にも、EUと取引をする関係にあるすべての組織が対象となるため、日本の企業でも対象になりえる可能性があります。 たとえば
上記いずれかに当てはまる場合はGDPRの対象です。
3rd Party Cookieとは
リターゲティング広告・トラッキング・ターゲティング広告などに利用される技術です。ユーザーの行動を追跡し、ユーザーとマッチ度の高い広告を表示させることなどが可能です。
企業側にとって利便性の高い技術ですが、ユーザーからは「プライバシー保護は大丈夫なのか?」と心配の声が聞かれます。このような背景から、2022年には3rd Party Cookieが廃止されます。3rd Party Cookieの代替として開発されているのがGoogleのプライバシーサンドボックスです。
プライバシーサンドボックスとは
プライバシーサウンドボックスとは、ユーザーのプライバシーを重視しながらユーザーに対して最適な広告を表示するための取り組みです。 2020年からGoogle Chromeやブラウザを中心に実証実験の提案、試験提供が開始されました。
プライバシーサンドボックスについて詳しくは下記リンクで解説しています。
「Googleの秘策」Cookieに代わるプライバシーサンドボックスとは?3rd Party Cookieの廃止にともないアプリ内ブラウザもITPの対象に
2022年に3rd Party Cookieの廃止が決定しています。 Appleは2020年12月にプライバシーラベルを発表し、Googleでは2021年度中にプライバシーサンドボックスのテストが開始されます。 日本でシェアの多いGoogle ChromeやSafari、これら2つのブラウザに関して情報を追うことが必要です。
佐藤氏は自社で広告を運用している場合も代理店を経由する場合も確認すべきポイントは同じだと解説します。
佐藤
プライバシー保護の流れが本格化しています。今まで重要視していなかったポイントも掘り下げて理解することが重要です。直近の仕様変更をみてわかるとおり各社で動きが活発化しています。代理店を経由する場合も、なぜ計測ができるのか・できないのかなどを含めて理解しておく必要があります。
直近の仕様変更
全体を通して
佐藤氏は2022年の3rd Party Cookie廃止に向けて対応するべき項目を以下のように述べています。
法整備への対応
3rd Party Cookie廃止に向けた対応
広告媒体・広告ネットワーク各社の対策・適応・テスト
佐藤
2022年に3rd Party Cookieが廃止になってから対策をしても間に合いません。法律・ブラウザ・広告の各対応を2021年度中に終える必要があります。
同意取得に関するセミナー参加者からの質問
ここからはWebセミナーに参加した方々からの質問に回答していきます。
Q:同意を得やすいバナーの出し方はありますか?
中道
ユーザーが慣れたUI/UXにするのがよいと思います。
海外では画面中央か画面下部に表示するパターンが多いため、ユーザーはその形に慣れてくると考えてます。法律的に問題のない内容、そしてユーザーにわかりやすいテキストを作ることが大事だと考えます。
Q:ポップアップ表示による離脱を懸念しています。成功事例や工夫されていることなどありますか?
中道
国内での成功事例はまだ少ないと思います。
いまだ業界団体からガイドラインが発表されていない状況なので、今後足並みを揃えていく形になると考えております。予定では2021年6月に個人情報保護委員会がガイドラインを発表します。そして同年の7.8月頃に業界団体からガイドラインが発表されると思うので、ガイドラインが出たタイミングから2022年4月の施行まで一気に広がると思います。
Q:個人情報保護に関する予算取りで苦労しています。何か改善案はありませんか?
中道
違反リスクの高まりを説明しつつ、法務の方を巻き込んで取り組む必要があると思います。
Q:マーケターが情報収集するうえで参考になる海外の会社はありますか?
中道
Airbnbの日本語のサイトを確認するとよいでしょう。
Airbnbのホームページはこちらから
Airbnbの日本語のサイトを確認するとよいでしょう。 Airbnbのホームページはこちらから Airbnb ホームページ Airbnb以外の企業を参考にする場合、同意に対してNOがいえない形式になっていることや、一定以上スクロールしたら同意とみなすような詐欺行為に近いバナーを表示している企業も見受けられるので、そういった事例は参考にしないよう注意していただきたいですね。
下記は大手飲料メーカーのサイトに表示されている同意バナーです。「同意する」しか選択肢のない事例です。
株式会社ペンシルへのお問い合わせ
株式会社ペンシルへのお問い合わせ株式会社ペンシルは、企業のWeb戦略を成功に導く研究開発型のWebコンサルティング専門会社です。
Webサイト・Webビジネスを成功させるためのトータルソリューションを提供します。
サービスの詳細やお問い合わせについてはこちらから
株式会社Priv Techへのお問い合わせ
Priv Techでは、何から着手すべきかお悩みの企業様へ「個人情報保護対応 準備できるくん」をおすすめしています。同意管理や改正法のポイントは、ごく一部でしかありません。改正法により企業として何が求められる必要なのか判断が難しい局面なので、弊社がコンサルティングとして手助けをするサービスです。
【各サービス】
パーソナルデータの取扱いにお悩みの方に
で、すべて解決!