匿名加工情報と仮名加工情報の違いを解説!押さえておきたいポイントとは

個人情報保護法法律 2022.09.30
匿名加工情報と仮名加工情報の違いを解説!押さえておきたいポイントとは

2022年4月、改正個人情報保護法が施行されました。改正された要項の中で、新たにデータ利活用に関する規定として、従来の「匿名加工情報」のほか、「仮名加工情報」が追加されました(令和2年改正法)。

しかし、改正法施行以来、両者の違いが分からないという声をよく聞きます。たしかに名前が似ていて分かりにくいかもしれません。

どちらも個人情報の利活用を促進する目的で作られましたが、求められる対応や該当範囲など異なる点も多く、両者の違いを明確に理解しなければなりません。

この記事では、混同しがちな「匿名加工情報」と「仮名加工情報」の違いや求められる対応を解説していきます。

1. そもそも個人情報の定義とは?

匿名加工情報と仮名加工情報は、読んで字のごとく、両者とも個人情報を加工したものとして存在しています。まず本題に入る前に、個人情報保護法における個人情報の定義について簡単におさらいしていきましょう。その上で、「匿名加工情報」「仮名加工情報」、それぞれの定義を解説していきます。

1-1. 個人情報とは「個人を識別できる情報」

個人情報は「個人を識別できる情報」を指す言葉です。

日本国内における個人情報は、個人情報保護法に記載されている通り、特定の個人を識別することができるものか、個人情報識別符号が含まれていれば個人情報に該当します。氏名、住所、生年月日、顔写真などが含まれます。

また、単体で個人情報となり得る個人識別符号には下記が該当します。

  • 遺伝子、顔、指紋などの身体情報をコンピュータで処理するために変換したデータ
  • マイナンバー、免許証番号、健康保険証番号、パスポート番号など、特定の個人に割り当てられた番号で、政令や個人情報保護委員会規則で指定されたもの

個人情報保護法の概要について知りたい方はこちらも合わせてお読みください。
>>個人情報にまつわる法律と動向を解説!海外・日本の違いとは?

2. 匿名加工情報とは

2-1. 匿名加工情報の定義

匿名加工情報は、2015(平成27)年の個人情報保護法改正により導入されました。消費者など本人からの同意を必要としないパーソナルデータの利活用に関するルールを定めています。

匿名加工情報とは、特定の個人を識別することができないように加工した個人に関する情報で、その情報を復元して特定の個人を再識別することができないようにしたものを指します。

個人情報保護法 第2条6項には以下のように記載されています。

6 この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。
一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。 引用:e-GOV 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)

2-2. 匿名加工情報の定義に則した加工イメージ

具体的な加工方法は下記イメージのとおりです。

(加工前) img_comparison-anonymization-pseudonymisation01.png

(加工後) img_comparison-anonymization-pseudonymisation02.png

仮名加工情報(後述)が他の情報と照合すれば特定の個人を識別できる(情報を復元できる)ものである一方で、匿名加工情報は、適切な加工の上で加工前の個人情報を復元できないようにする必要があります。つまり、仮名加工情報よりも匿名加工情報の方が大幅に加工されることになります。

2-3. 匿名加工情報の特徴

匿名加工情報は、第三者提供を含め流通を念頭においた制度であり、第三者提供を柔軟に行えることが主な特徴です。

しかし、制限なく第三者提供できるわけではありません。第三者提供の際には、提供先に対して匿名加工情報である旨を明示する等の対応が必要です。加えて、加工元の本人を特定しようとする行為が禁止されています。

第三者提供について、詳しくはこちらをご確認ください。
>>第三者提供とは?厳格化する個人情報の取り扱いと注意点

参考:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)

3. 仮名加工情報とは

3-1. 仮名加工情報の定義

仮名加工情報は、2020(令和2)年の個人情報保護法改正により導入されました。個人情報を適切に保護しつつ、分析による事業者内部でのさらなる利活用を促進する観点から導入されたルールです。

仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別することができないように加工された個人情報を指します。

個人情報保護法 第2条5項には以下のように記載されています。

5 この法律において「仮名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報をいう。
一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
引用:e-GOV 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)

3-2. 仮名加工情報の定義に則した加工イメージ

具体的な加工方法は下記イメージのとおりです。

(加工前) img_comparison-anonymization-pseudonymisation01.png

(加工後) img_comparison-anonymization-pseudonymisation03.png

仮名加工情報は、それだけでは特定の個人を識別できませんが、加工前の元データと照らし合わせれば特定の個人を識別できるので、一部例外を除き個人情報に該当します。上記イメージの通り、氏名を削除したり住所を丸めたりする等の加工を施します。

また、仮名加工情報には利用目的の変更の制限がないため、本人に通知・公表している利用目的以外の目的で利用できます。

例えば、同一企業内で、それぞれの事業部で分析を目的とせずに収集してきた個人情報がある場合、本来本人の同意を得ないと、目的外利用(分析目的の利用)を行うことはできませんが、仮名加工情報に加工することで利用できます。つまり、本人同意を取得せずに顧客情報を分析することが可能になり、マーケティング施策等に活かすことができるのです。

3-3. 仮名加工情報の注意点

仮名加工情報にはいくつか重要な注意点があります。

仮名加工情報は分析による事業者内部での利活用が念頭に置かれた制度であり、第三者に提供できません(委託先や共同利用先を除く)。また、仮名加工情報に含まれる連絡先を利用して本人にダイレクトメールを送ること等が禁止されています。

ただし、仮名加工情報は開示等請求の対象にならず、漏えいした場合の報告等の義務もありません。

4. 匿名加工情報と仮名加工情報の比較、対応の違い

まとめると、匿名加工情報は個人情報を加工して特定の個人を識別できないようにした情報を表します。一方で、仮名加工情報は他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できません。つまり、元の個人情報へ復元可能か否かという点で大きくこれら2つの情報は異なっています。

  • 匿名加工情報:他の情報と照合すれば、本人を特定可能な加工
  • 仮名加工情報:本人であるか一切特定できない加工

また、匿名加工情報は個人と結びつく情報が削除されているため、第三者への提供が可能です。仮名加工情報は第三者提供が制限されているかわりに、個人情報と同等な有用性があるため、より詳細な分析を行うことが可能です。

以下、求められる対応の違いに注目し、表にしてまとめました。

img_comparison-anonymization-pseudonymisation04.png

改正個人情報保護法について、詳しくは以下をご覧ください。
>>【2022年】改正個人情報保護法ガイドラインの重要ポイントを解説

5. おわりに

この記事では、「匿名加工情報」と「仮名加工情報」の違いや求められる対応を解説しました。

プライバシーの観点から個人情報の安全を確保することはもちろん必要ですが、それだけではなく、収集したデータを積極的に活用する上で、匿名加工情報と仮名加工情報の規定は重要です。それほど、データ利用の「攻め」と「守り」の両立がこれからの企業にますます求められているとも言えます。

この記事が参考になれば幸いです。

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公開日:2022年9月30日

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